ドバイの不動産市場は、外国人投資家にオープンな投資環境、中心地でも6%を超える高い利回りや経済成長と人口増に支えられた市場成長性、先進的な規制や投資家保護施策など、多くの魅力で関心を高めています。レディ物件(完成済みの即入居可能な物件)の購入は、特に外国人投資家にとって、ドル建の(UAEの通貨ディルハムはドルとレート固定)安定した賃料収入の獲得を目的とした投資手段として注目されています。以下は、ドバイでレディ物件を購入する際の一般的なステップバイステップガイドです。ドバイホームチームの経験からよりイメージが沸くように補記します。
どんな投資とも変わらず、ドバイ不動産投資での成功への第一歩は、明確な目標と予算の設定から始まります。不動産を購入する目的(賃料収入を優先するか、または資産価値の増加か、そのバランスか、など)と、投資できる予算(購入費用、登録費、仲介手数料、リノベーション、家具設置などの追加コストを想定する必要性)を決定します。日本とドバイは商慣習が異なる部分があり、コスト項目や支払タイミングは担当エージェントに事前によく確認をしてください。例えば、ローンを利用する場合は、銀行への手数料やブローカーへの報酬などが発生します。また、日本からの送金手数料や為替手数料なども考慮する必要があります。ドバイの不動産登記料は物件価格の4%です。その他にも、賃貸に出す場合にも、テナントを探してくれるブローカーに手数料の支払いが必要です。ローンを利用する場合に、頭金やリノベーションなど、現金をいくらまで支出できるのか、この時点でよく検討する必要があります。
投資目的と予算から逆算し、購入後の運用方法(自己使用または賃貸)、資金調達(自己資金、銀行融資など)、出口戦略(売却時期や売却先候補、付加価値・差別化など)について検討します。これには、市場動向の分析や、将来の市場価値を予測することも含まれます。ドバイホームでは運用方法について、主に、短期賃貸を軸に、バックアップを長期賃貸、売却による撤退という戦術を採用しています。ドバイでは長期賃貸の賃料データは公開されていますが、短期賃貸市場は公開データがありません。私たちはサードパーティの分析会社からデータを購入し、最も効率的に運用されているエリア、物件、オペレーターを特定し、購入する物件イメージの特定に役立てています。また、銀行融資を利用する場合は、この時点で銀行に融資可能性について打診が必要です。ドバイでは、収入証明や銀行取引明細などの情報を提供し、銀行に与信枠を確認し、事前承認を取る必要があります。居住者、非居住者で利用できる銀行や商品が異なり、LTV(Loan to Value、購入金額に占める融資利用率)や金利に大きな違いがあります。
ステップ2で戦略を確定し、その実行可能性(現金とローン、データによる裏付け)を確保した後には、より具体的に投資対象のエリアとビルについて理解を深める必要があります。ドバイホームは、投資の際、実際にそのエリアに時間帯を変えて何度も出向き、渋滞状況や、居住者・利用者のデモグラフィック、アクセス、学校、病院、渋滞、レストラン、カフェ、スーパーなどの周辺環境を確認します。実際に、自分がそのエリアに住む、または民泊で滞在することを想像し、エリア内のどのビルが優位性が高いかを確認していきます。必要に応じてビルの管理人や、通行人に対して聞き取りを行います。ビルの管理会社の品質は長期的なビルの資産価値の維持や民泊の安定運用にとても重要です。また、そのエリアに実際に住んでいる人は、私たちが想像していなかった良い評価や不満を持っていることがあり、とても有用です。ビルのバルコニーや駐車場もチェックして空室率の推定もしています。
物件探しは、不動産ポータルサイトや信頼できるエージェントネットワークを通じて行います。ドバイの不動産市場は非常に動きが早いです。また、民泊運用を前提とした場合、引渡時に空室であることが絶対条件です。民泊のパフォーマンスが良い人気エリアは賃貸入居率が高いエリアが多く、空室物件を希望する購入価格で探すことはとても骨の折れる作業です。売り手側のエージェントもより多くの手数料を取ろうとするため、日本の不動産市場と同様に囲い込みが存在し、買い手側にエージェントがついている場合に商談を断ってくることがあります。ポータルにリスティングされている物件は実際にはもう売れてしまっていたり、リード獲得を目的とした架空の案件であることもあります。(最近は、規制当局が罰則を強化し、対策しようと努力しています。)
売り手側エージェントと日程調整し、候補物件を実際に視察します。この段階で、ビル内部に初めて入ることができるので、エントランス、プール、ジムなどの共用部の品質や管理状況も確認します。ビルの管理会社が貼出している入居者向けの案内等も確認し、管理会社が機能しているか、または、騒音クレームなどが出ていないかなどを確認します。実際の部屋の確認は、他の市場での実施とさほど変わりはありません。ドバイは部屋からの眺望が重要です。確認時には、その方角に将来的にその眺望を遮るビルの建設がないかも確認する必要があります。また、ドバイは開発が続いており、ビル周辺の工事からの騒音も注意深くチェックします。部屋の向き等で同じビルの中でも騒音レベルは様々で、民泊で運用する場合は入念に確認する必要があります。内見も予定通りにはいきません。ドバイは時間帯によっては渋滞がひどく、相手のエージェントが時間に大きく遅れてくる場合があります。キャンセルになることも多いです。日本と同様に、人気の物件では、内見予約をした後に他の買い手候補が内見なしでキャッシュで買ってしまうという例もよくあります。抑えたい物件を見つけた場合は、物件価格の10%に相当する小切手を振り出し、相手方のエージェントに渡し物件を予約します。
最終価格や支払条件、引渡日などの契約条件について交渉し、合意します。ここでは、キャンセル規定、各エージェントのフィーの取り分を記載した合意書を取り交わします。これは、Form FまたはMOU(覚書)などと呼ばれます。この合意書は法的拘束力があります。この合意書の作成や売買契約に関する諸々の手続きは経験豊富なエージェントに委ねるか、専門業者(コンヴェイアンスと呼ばれ、費用は複雑さによって異なり、ドバイホームの直近のシンプルなケースでは7,350 AEDでした)を起用します。これらの手続きに掛かるフィーも事前に確認が必要です。
条件合意に達した場合、次は本決済の準備が必要です。ドバイの不動産市場は小切手を利用することが商慣習になっています。UAEに銀行口座を保有していれば、マネジャーズチェック(振出と同時に残高が引落しされる保証小切手)を銀行の窓口や銀行のアプリを用いて振出します。小切手の振り出し先は、物件代金(対売り手)、仲介手数料(対エージェント)、4%の登記料(対ドバイランドデパートメント / DLD)などが含まれます。UAEに銀行口座がない場合は、エスクローサービスを利用して、小切手を代行で振り出してもらいます。これにも金額に応じたフィーが発生します。
売り手は売却に際して、デベロッパーに対しての未払い債務がないことを証明するNOC(Non Objection Certificate)の取得が必要です。また、売り手が融資を利用し、物件が担保になっている場合は、銀行からのLiability Letter(残債の確認)の取得やクリアランスなど、手続きが変化・増加します。買い手が融資を利用する場合も、銀行による購入物件のバリュエーションや、融資の最終承認、銀行発行の小切手の入手など、購入手続きが異なります。
ドバイランドデパートメントまたは提携するTrustee Officeにて相手方(代理人またはオーナー本人)と会い、オフィサーの立ち会いのもと、小切手の引渡や登記情報の変更を行います。この手続きには4,200 AEDの費用を要します。ドバイの不動産登記システムは高度に電子化されており、手続きが完了すると数時間も経たないうちに新しいオーナーにメールで電子化されたTitle Deed(権利証)が送られます。
全ての手続きが完了したら、物件の鍵を受け取り、新しい所有者としてのフェーズが始まります。事前に、物件のメンテナンスや管理に関する情報も確認し、スムーズにクリーニングやメンテナンスが進められるように準備をしましょう。