本稿では、「日本人と日本法人にとってのドバイ不動産投資に係る税」というテーマで、ドバイの不動産投資に係る税制に関して解説します。本稿では、ドバイの税制の現状、ドバイで不動産投資に係る税金、法人と個人の違い、居住者と非居住者の違い、オフショア対策税制など重要な論点に焦点を当てます。私たちは税の専門家にコンサルテーションを受けた上で本稿を執筆していますが、実際の判断においては、個々の事情や特殊性に応じて慎重な判断が必要となり専門家に相談をした上で、ご判断をお願いいたします。本稿は2024年4月7日時点での知見で執筆しています。
ドバイ、及び広義のUAE(アラブ首長国連邦)では、世界的に低い税率で知られています。個人所得税が課されない一方で、2018年には5%の付加価値税(VAT)が導入されました。2023年には9%の法人税が導入されました。法人にはビジネスライセンス制の下、設立時と更新時にライセンス費用の支払いが必要です。
ドバイの不動産投資においては、購入時に4%の登録税が必要です。それ以外には日本の固定資産税のような、保有に際して継続的に支払う税はありません。個人所得である限り、賃貸収入に対する所得税も課さません。そして、個人名義である限り、不動産を売却する際の、譲渡税やキャピタルゲイン課税はありません。不動産に対する贈与税も相続税もありません。このシンプルかつ投資有利な税制はドバイを含むUAEを非常に魅力的な投資地域にしています。
UAEでは2023年の法人税の施行後、法人での不動産所有による賃料収入や譲渡益に対して課税がされるようになりました。375,000 AED(日本円で約1,500万円)までの課税所得は非課税で、それ以上の課税所得に対して9%が課税されます。法人の課税所得の計算の枠内で、役員報酬、給与、減価償却費、その他の経費を損金計上することが可能です。
ドバイの居住者かつ個人で不動産投資を行う場合は、非課税です。一方で、非居住者がドバイで不動産投資を行う場合は法人と同様に扱われ利益に対して9%が課税されます。実際にはドバイで課税された分が、日本では二重課税の解消対象となるので、ドバイの9%分は日本で課税対象から除外されます。また、ドバイにはゴールデンビザ制度があり200万 AED以上(約8,000万円)の投資を行えば、10年更新のビザが発行され、居住者扱いされ、非居住者としてのUAEでの課税はなくなります。(労働ビザにある6ヶ月ごとの入国要件もなし)
税法上の日本居住者がドバイの不動産に投資をする場合、賃料収入、譲渡益の全てが日本で総合課税されます。日本では日本の居住者である限り、租税条約に基づく一定の調整はありつつも、全世界での所得が課税対象になります。譲渡所得税率の適用判定等は原則として日本でのルールが適用され保有期間に応じて税率が決定されます。譲渡税の計算についても日本のルールの下で保有年数等に応じて税率が変わる為注意が必要です。また、ドバイでの不動産投資事業に係る経費や減価償却費は日本で経費として計上することができますが、マイナスが生じた場合でも他の所得と損失を通算することはできません。
ドバイは外国法人によるドバイ不動産の所有を許しておらず、現地法人を設立して不動産を保有する必要があります。この法人を日本居住の個人が保有する場合はオフショア対策税制で所得が合算されることは前述の通りですが、日本法人を親会社としてドバイ法人を設立し投資法人とした場合は、ドバイ法人の利益は同じくオフショア対策税制によって日本法人の課税所得に合算されます。個人所得税率より法人税率が下回る場合は経済的メリットがあります。しかしながら、ドバイの法人維持にはライセンス取得・更新や会計費用など一定の設立維持コストがあり、投資規模によっては経済的メリットが得られない場合もあり、注意が必要です。
以上、ドバイの税制はその低税率とシンプルさで、不動産投資を考える上で非常に魅力的な選択肢です。しかし、自国の税法との関係も考慮に入れ、適切な税務計画を立てることが重要です。