
はじめに
今回は、ドバイ不動産投資におけるレバレッジについて考察します。ドバイにおいては、基本的に投資対象がオフプラン(未完成)であればデベロッパーの提供する分割支払いプラン、レディ(完成)であれば銀行の提供する不動産担保融資がレバレッジの源泉となります。本記事では、日本では一般的ではない、オフプランと分割支払いプランの組合せに焦点を当て、UAE万博の会場跡地に作られたEXPOシティ物件の具体例を用いながら解説します。
オフプラン投資とペイメントプラン
オフプランは不動産を購入する際に、計画段階または建設中の物件に投資する方法です。この投資方法には、いくつかの魅力的な特徴がありますが、ファイナンスの観点で特徴的なのが「ペイメントプラン」です。これはデベロッパーが用意する分割支払いプランで、購入金額を分割で支払うことができ、契約時に全額を用意できなくても購入することができます。以下に実際のペイメントプランの例を提示して、資金レバレッジ効果について検討します。
Expo CityのSky Residencesのペイメントプラン
具体例として、Expo CityのSky Residencesを紹介します。このプロジェクトでは、デベロッパーが以下のペイメントプランを提供しています。
- 完成前の3年間で50%を支払い(契約後1ヶ月で20%を支払い、その後、6ヶ月毎に5%)。
- 完成引渡後の50ヶ月で残りの50%を支払い(引渡から6ヶ月ごとに5%)
完成引渡後に支払いの一部分について分割支払プランを提供することは「Post Handover Payment Plan」と呼ばれています。これは、すべてのオフプランプロジェクトで提供されているわけではありません。多くのオフプランでは、契約直後から分割支払いを開始し、2〜3年の期間にわたって50〜60%を完成までに支払い、残金を引渡時に一括で支払うというものです。
オフプラン投資のレバレッジ効果
ペイメントプランは銀行融資(ドバイでは一般的に最長で25年程度)と比較して5年前後と支払い期間は短いですが、支払いを繰り延べられることから、銀行融資に準じたレバレッジ効果があり、少ない手元資金での投資が可能になります。加えて、銀行融資のように利息が発生することはありません。また、銀行融資なしで物件を購入することが可能です。オフプラン投資では、ペイメントプランの途中で残債務がある状態でも、規定以上の金額の支払いを完了することで、所有権の転売が可能です。一般的には、物件価格の30〜40%が転売のための最低払込金額に設定されており、これはデベロッパーやプロジェクトごとに異なります。これを活用することで、限定された自己資本の投下で、物件価格全体に係る大きな転売益を得ることができます。
オフプラン投資では、この性質を活用して、人気のプロジェクトの需要が高いユニット(眺望良好、角部屋など)をどうにかして手に入れ(争奪戦です)、その後に短期間で利益を乗せて転売しようとするプレーヤーが多数存在します。これをフリッピングと呼びます。例えば、販売価格が1M AEDのオフプラン物件を購入し、30%を振り込んだ時点で20%値上がりしていた場合、300,000 AEDの払込だけで、200,000 AEDの利益を得ることができます(諸費用等は考慮していません)。このレバレッジ効果がオフプラン投資が人気の理由です。
当然ですが、転売に適したユニットを購入することも、希望する金額で売却することも、常にうまくいくわけではありません。完成物件とは異なり、運用利回りも得られないことから、収益性については、良くも悪くも市場環境の影響を大きく受けることになる点は留意が必要です。また、完成物件のように賃料収入を得てそれを支払いに充てることもできないため、基本的に自身の収入で支払いを行うことが必要になります。
売却が思うようにいかない場合でも、ペイメントプランのスケジュール通りに支払い期限が到来します。この支払ができない場合、物件の所有権は没収されDLDを通じて競売にかけられるか、購入者がペナルティを支払の上契約がキャンセルされます。そして、法令に基づいて一定金額のペナルティの支払いが必要です。
すべての方が利用可能なオプションではないですが、オフプラン投資では、物件の完成度が80%程度に到達すると、UAEの銀行から融資を得られるようになります。完成引渡し時の残金の一括納付の段階で、銀行融資を得ることで残債の支払いに充て、より長い期間にわたって返済をすることが可能です。転売がうまくいかなかった場合のバックアップオプションとして検討が可能です。
レディ物件投資における財務レバレッジ
レディ物件投資は、既に完成している不動産を購入する方法で、銀行から融資を受けることでレバレッジをかけることが可能です。ドバイはとても珍しく、非居住外国人にも積極的に不動産投資ローンを提供しています。基本的には、日本の不動産投資における融資とメカニズムが同じなのでここでは詳説しません。最近の傾向では、ドバイでは多くの銀行が不動産購入者に対してLTV(Loan-to-Value)60〜80%程度で融資しています。例えば、LTVが70%であれば、1M AEDの物件を購入する場合、700,000 AEDを銀行からの融資で賄い、自己資金は300,000 AEDを用意します。返済期間や金利は、借り手の勤務状況や収入、年齢などによりますが、外国人向けの最長期間は25年で規制されています。直近、当社のお客様(居住者、外国人、30才前後)が得た融資では返済期間は25年で、金利は4%程度でした。
UAEでは中央銀行が市場が過度なレバレッジに晒されることを規制しており、外国人向けに、1件目の投資では最大80%のLTVが提供されますが、2件目以降の投資ではLTVが最大60%に制限されます。日本の融資環境も以前より厳しくなっていると思いますが、ドバイでも一定の制限が存在し、無秩序に過剰な流動性が提供されないように規制されています。
最後に
ドバイ不動産市場は、ペイメントプランや非居住外国人への融資など、多様なファイナンスオプションを提供しており、プロ投資家にとって魅力的な市場です。オフプラン投資とレディ物件投資は、それぞれ異なるメリットとリスクを持っています。投資家は、自身の投資目的やリスク許容度に応じて、最適な投資戦略を選択することが重要です。ドバイホームでは、非居住者の日本人の方が融資を得て、ドバイ不動産に投資をすることをサポートしています。お気軽にお問い合わせください。